
イベント事が多くなるゴールデンウィークや年末は、不規則な食事なりがちで免疫力が下がることも発生しやすくなる時期です。
特に年末は風邪の予防を意識して生活する方も多いかと思います。
さらに、風邪の他にも気を付けたい病気のひとつが胃腸炎です。胃腸炎にはいくつかの種類があり、そのなかでもノロウイルスがよく知られていますが、ロタウィルスから発症する胃腸炎が増えていることをご存知でしょうか。
ロタウィルスは、感染力が非常に強い性質を持っています。0〜6歳までの乳幼児期に特にかかりやすい病気で、5歳までの間にほぼすべての子どもが感染すると言われています。乳幼児がロタウィルスに感染すると水のような下痢、嘔吐、吐き気、腹痛、発熱などを発症し、ひどいときには脱水症状を起こし、入院が必要になることもあります。
子どもだけでなく、その高い感染力で大人に感染することもあります。健康な体の場合、大人は免疫力が高いためほとんど症状が出ることはありませんが、急に気温が下がって体調を崩しがちな今の季節、風邪などの病気で免疫力が下がっている時に感染すると大人でも重症化することがあり、昨今大人でロタウィルスの症状を発症する人が増えてきています。
特に幼い子どものいるご家庭ではしっかり対策したい、ロタウィルスの特徴や予防法について確認していきましょう。
ロタウィルスの予防法
1.予防は予防接種とこまめな手洗いが大切
近年、テレビなどでロタウィルスの集団感染に関するニュースを見たことはないでしょうか。ロタウィルスは毎年2~3月、冬の空気が乾燥している時期に流行し、保育園、幼稚園、小学校など、人が集まる場所で感染を拡大していきます。
【ロタウィルスの潜伏期間】
潜伏期間は2〜4日で石鹸やアルコール消毒でも落ちにくい強さがあります。そんな予防が難しいロタウィルスを防ぐには、
念入りな手洗いの徹底が最も効果的とされています。
【特に子供の感染には注意が必要】
事前に予防接種を受ければ感染を防ぐことができそうですが、実は
ロタウィルスの予防接種は生後6週目から3ヶ月半頃までの間にしか受けることが出来ません。
これは免疫力の低い乳幼児がロタウィルスによる胃腸炎を起こすと重症化しやすく、けいれんや脳症、急性腎不全などの合併症が起こる可能性があるためであること、
そして大人の場合基本的に感染しても症状が出ること自体が少なく、免疫力が低下している時に感染・発症した場合でも乳幼児よりも抵抗力があるため、こまめに水分を取りながら下痢などで体外にウィルスを排出してしまうことで治ることが殆どであることが理由とされています。
【ロタウイルスワクチンの種類と費用】
乳幼児の予防接種は経口ワクチン(生ワクチン)タイプで、シロップ状のワクチンを直接飲み込む様になっていて、病院でお医者さんが飲ませてくれます。
ロタウィルスのワクチンは2種類あり、どちらも経口ワクチン(生ワクチン)ですが、摂取回数とワクチンの生成内容が異なります。2種類のワクチンにどのような差があるのかをご紹介いたします。
- ・ロタリックス
- 【摂取回数】 2回 【費用】一回12,000円〜15,000円/合計24,000円〜30,000円
一番流行していて重症化しやすい種類のロタウィルス1種類を弱毒化したワクチンです。
交差免疫というワクチンに含まれているウィルスに対する免疫を獲得することで、タイプの似ているほかのウィルスにも防御反応を示す効果によってワクチンのベースの種類以外のロタウィルスに対しても予防効果があります。
4週間間隔で2回摂取しますが、生後6週から14週6日までに1回目を受け、2回目は生後24週までに摂取します。生後24週をすぎるとワクチンの摂取を受けることができなくなります。
- ・ロタテック
- 【摂取回数】 3回 【費用】一回7,000円〜10,000円/合計21,000円〜30,000円
流行して重症化しやすいウィルスを初めとした5種類のロタウィルスを弱毒化したワクチンです。
4週間間隔で3回摂取します。生後6週から14週6日までに1回目を受け、生後32週までに摂取完了します。生後32週をすぎるとワクチンの摂取を受けることができなくなります。
【助成金について】
ロタウィルスは保険適用外の任意予防接種なので実費負担になります。地域によってはロタウィルスの予防摂取に助成金が支払われる自治体もあるので予防接種を受けようとお考えの方は一度お住いの自治体にお問い合わせしてみましょう。
全国の各自治体の情報検索はこちらから
https://www.j-lis.go.jp/spd/map-search/cms_1069.html
2.ワクチンの副作用について
ワクチンの摂取で気になるのが副作用。ロタウィルスの予防接種後に出ることがある症状は原因不明のぐずり、下痢、嘔吐、食欲不振、咳、鼻水、発熱などがあげられます。これらの症状のほとんどは3日ほどで治まります。
上記以外の重篤な副作用として腸重積(ちょうじゅうせき)という病気があります。
腸重積は腸の一部が腸の中に入り込んでしまうもので、進行が早く、早期に適切な治療が受けられれば完治しますが、短期間で重症化してしまう可能性が高い病気です。
予防接種から一ヶ月の間はこの腸重積になるリスクが上がるため、異変があったらすぐにかかりつけの医師に相談しましょう。
3.日頃の手洗いうがいも忘れないように
「1.予防は予防接種とこまめな手洗いが大切」でも触れましたが、
ロタウィルスの予防法としては念入りな手洗いが重要です。ロタウィルスの主な感染経路は経口感染で感染した人の嘔吐物、便に触れた人から感染が広がります。
大人の場合感染しても症状が出ない人が多いため、オフィスや飲食店などいろんな場所で感染するリスクがあります。特に体調がすぐれない時はいつも以上に念入りに手洗いうがいを行いましょう。石鹸やアルコール消毒で落ちにくくても、しっかりと爪の間や関節の節目などを意識して洗うことにより感染のリスクを大きく減らすことが出来ます。
2.感染してしまった後の注意点
1.感染時の症状
症状1.発熱
「胃腸炎」と聞くと、症状として下痢や嘔吐が一般的ですよね。
しかし、ロタウィルスに感染した場合には39度以上に発熱する人もいます。決して多くはありませんが、悪化することによりけいれんや脳症を発症する人もいるので注意が必要です。
症状2.嘔吐
ロタウィルスに感染すると体がウィルスを排出しようと断続的に嘔吐する症状が多くみられます。
脱水症状を引き起こす可能性も高いので、嘔吐後に口を濯ぐ(ゆすぐ)用の水と水分補給用の水、またはスポーツドリンクなどを用意しておきましょう。この際水分補給用の飲料は胃腸の活動を低下させないようぬるま湯程度に温めておくと良いでしょう。
症状3.白い便
ロタウィルスの場合は便が白くなるという特徴があります。ロタウィルスに感染した可能性があると感じた時には、便の色も忘れずに観察しておいて下さい。乳幼児や子供の体調に意見を感じた時には、トイレに付き添ってあげると良いでしょう。
2.マスク着用を徹底!嘔吐物などの処理はゴム手袋で
ロタウィルスは、
直接触れることによる感染のほか、間接的な感染があることも覚えておきましょう。例えばロタウィルスに感染した人が机や椅子に触れて、その部分にロタウィルスを含む汚染物質が付着したとします。すると、そのあとそこに触れた人がロタウィルスに感染してしまうことがあるのです。
汚染物質とは、主に嘔吐物や排泄物を指します。そのため、排泄後にはトイレで時間をかけてせっけんを使用して手を洗いましょう。そのほか、乳幼児のオムツ替えをする時にも注意が必要です。オムツ替えをした手をしっかり洗うことのほか、排泄物が床などに付着したままにならないよう清潔を保ちましょう。
嘔吐物を片付ける際にはゴム手袋などを使って直接肌や衣服に付着することを防ぐなどの感染予防の徹底する必要があります。タオルやハンカチを通して感染することもあるので、それらはこまめに洗濯するようにしましょう。
3.消毒には家庭用漂白剤が使える
一般的に、病人の看病などで嘔吐物を片付ける時、まず嘔吐物をビニール袋などに移してトイレに流す、または口を縛って捨て、汚れた床や机などをタオルや雑巾で拭く、といった流れで片付けると思いますが、ロタウィルスは最後に拭いた床や机に残っています。そのまま拭いた場所が乾くとウィルスは風で舞い上がり、空気中を漂い広がっていきます。
ロタウィルスは、石鹸やアルコール消毒でも落ちにくいウィルスです。なぜアルコールが効きにくいのかというと、ロタウィルスは多くのウィルスが持つ「エンベローブ」と呼ばれる膜を持っていないためです。アルコールが多くの除菌に有効な理由はこの「エンベローブ」をアルコールが破壊することでウィルスにダメージを与えます。しかし、ロタウィルスはこの膜を持っていないので、
アルコールにウィルスそのものを破壊する効果は無いため、ロタウィルスには効かないのです。
なので、手や肌に付着してしまった場合は念入りに石鹸などで洗い、よく水で流すことでなるべく落とすことが大切ですが、床やトイレ・机など感染者が触れているところや嘔吐物の片付けをした後の対策として
効果的とされているのが「塩素系漂白剤」です。
塩素系漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムは日常で発生する多くの毒素の消毒に有効で、ご家庭にあるキッチン用ハイターやキッチンブリーチなどに含まれています。
キッチンハイターを薄めた消毒液を作成し、食器などをつけ置きしたり、スプレーボトルに詰めて家具屋床などに噴霧することで効果的に室内を消毒することができます
詳しい作り方はこちらをご参照ください。
https://moomii.jp/kosodate/rotavirus-disinfecton.html
4.色落ちさせたくない衣類の消毒は熱湯消毒で
衣服やカーペットや布団などに付着している場合、通常の洗濯洗剤ではウィルスは死滅しません。むしろ洗濯機でウィルスに汚染された衣類と一緒に他の衣類を洗うことで感染が広がってしまいます。
前述したハイターを使った消毒液につけ置きすると、色付き・柄物の衣類は色落ちしてしまいます。原則として嘔吐物などが付いてしまった衣類は捨ててしまった方が感染を防ぐ上で安心ですが、どうしても捨てたくないものの場合、
熱湯消毒も有効です。
85℃以上の熱湯に2分以上つけ置きすることで消毒することができます。熱湯消毒だけでは心配な場合、高温のスチームアイロンをかけるとより効果的です。
まとめ
ロタウィルスは、大人が感染した場合、高熱がでない方もいれば重症化する方もいます。石鹸やアルコール消毒では完璧な対策ができないため、体調管理をしっかり行い、石鹸で手洗いする場合には時間をかけて丁寧に洗うことを心がけましょう。
乳幼児や子どもは抵抗力がないため、ロタウィルスに感染すると重症化しやすいので、周りの大人が気を付けてあげましょう。子ども体調の変化もですが、症状が出ていなくても大人が感染していて子どもに移してします場合もあります。
なので、身の回りにロタウィルスに感染していると思われる人がいる場合は、帰宅時の手洗いうがいを徹底しましょう。もし、大人でも子どもでも感染してしまった場合に下痢や嘔吐・発熱が続くという症状には、水分の補給を十分にすることが大切です。
ロタウィルスの症状の多くは一週間以内に治まります。自分が感染者にならない自衛も大切ですが、もし家族など身近な人が発症したときはウィルスを広げないことを念頭に置いて冷静に対応しましょう。
参考サイト
SARAYA ロタウイルス感染症
http://family.saraya.com/kansen/rotavirus/
医療法人 増田クリニック小児科
http://masuda-syounika.jp/info/rota/
厚労省 ロタウイルスに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/index.html
NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会
http://www.know-vpd.jp/vc/vc_nw_rota.html